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取引基本契約書の特徴と作成のポイント5−寺村総合法務事務所

取引基本契約書のポイント−5COMPANY

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3.5 取引基本契約の構成と契約条項のポイント−X

  • 知的財産権条項

    売主=製造者側が設計や製造をする際に発生した発明や考案、著作物に関する知的財産権(=特許権、特許を受ける権利、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、回路配置利用権等)に関する権利の帰属を定める規定です。

    通常は、設計・製造した側がすべての権利を保有するわけですが、ここでは、買主側が提供した情報(図面、仕様書、ノウハウ、アイデア、データなど)に基づき売主=製造者側がなした発明や考案、著作物について、原則通り製造者側が権利を保有するとするのか、情報を開示した買主側に帰属するとするのか、共有とするのか、などを定めることになります。

    また、仮に権利を買主側に帰属させたとしても、その権利に関する実施権を売主側が許諾を受けるという選択肢もあります。


  • 知的財産権紛争条項

    売主が納入する目的物につき、第三者の知的財産権を侵害しない旨の保証を規定するものです。

    また、買主と第三者との間に知的財産権に関する紛争が発生した場合には、当該紛争の解決および賠償に関して売主が責任を持つ旨を規定します。

    ポイントは、上記の製造物責任と類似していますが、当該知的財産権紛争が誰の責任で発生したかによって、責任の負担者をきちんと分けるということです。

    つまり、売主が自分で製造したのだから原則として売主が知的財産権紛争に責任を負うとしても、例えば買主側の特別な要請や設計書に基づいて製造した場合には、応分の負担を買主側に求めるということです。

    ただその場合にも売主=製造側が第三者の知的財産権を侵害することを知っていたのに告げなかったような場合には、再度原則に戻って製造側が全責任を負担する、とすることも考えられます。


  • 秘密保持条項

    守秘義務に関する条項です。

    技術情報の開示を伴う製造委託的要素がある場合のほか、単なる売買だけの取引基本契約においてもそれが継続的関係であることから、お互いに守秘義務を負うことを規定することが通常です。

    制限を課す期間をどうするかがまずポイントとなります。

    また、秘密保持義務の例外をどの程度認めるかもポイントです。

    その例外に関して、裁判所・官公署からの法に基づく開示要求の場合については、開示範囲を最小限にするために事前通知義務を課し情報開示を避けるための手段があれば取れるようにすること、あるいはインカメラ手続き(裁判手続きの中で公開せず裁判官だけに証拠を開示する方式)などを最大限に利用する義務などを課すことが必要となります。

    なぜならば、通常の公知等の例外と異なり、官公署等の命令があったからといって、開示される情報の秘密性は何ら失われておらず、法に従いつつもできるだけその範囲を狭めることが情報の開示者の利益となるからです。


  • 契約期間条項

    契約期間を定める条項です。

    自動更新とすることが多いと思いますが、期間満了前に交渉義務を互いに課す等の規定にとどめる場合もあります。

    ポイントは、契約終了後においてもなお効力を有する「残存条項」の定めを置くことです。
    例えば、知的財産権紛争や、製造物責任、損害賠償、秘密保持義務等は、契約が終了したからといって無罪放免されるとするのは問題があります。

    したがってそれらについて、契約終了後もなお効力がある旨を規定します。

    また、基本契約が終了したとしても、当該終了時にまだ未履行の個別契約が残っている場合、その個別契約の処置(無効にするか、有効として最後まで履行させるか)も規定しておいた方が良いでしょう。


  • 解除条項

    契約期間前に契約を終了させる条件を規定するものです。

    催告なしに解除できるとする項目と、債務不履行など催告の上解除できるとする項目に分ける場合もあります。

    取引基本契約ですから、買主から見ると契約を敢えて終了させる義務はない場合が多いでしょう。買主は単に発注をしなければいいだけですので。

    但し、買主側にも発注義務があるような場合や、製造委託をしていて情報や金型等を製造側に提供しているような場合は、基本契約を解除するメリットがあります。

    売主としては買主からの発注に基本的に応えることが要請されるでしょうから、基本契約を解除するメリットがあります。



  • 輸出管理条項

    買主が購入した目的物を買主の国以外の国へ輸出する際に、許可取得等の適切な輸出手続きを取る旨を規定したものです。

    日本、米国、EU等において定められている大量破壊兵器の拡散を防止するための規制が適用される製品の場合、個別に輸出許可を取得したり、許可品ではない場合でも非該当証明を付けなければならない場合があります。
    それを買主として順守することを求めるための規定です。








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代表 寺村 淳
 東京大学法学部1985年卒
 日本製鉄法務等企業17年
早稲田大学オープンカレッジ講師
 行政書士/宅建主任有資格
Email:legal(at)eibun-keiyaku.net
 (at)を@にして下さい
TEL042-529-3660


著書

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