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秘密保持契約書の特徴と作成のポイント3−寺村総合法務事務所

秘密保持契約のポイント3COMPANY

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秘密保持契約の条項例とポイント-3

第10条(非保証)

本契約に基づく機密情報の開示もしくは受領は、当事者間で別途合意が成立した場合を除き、いかなる場合であっても、当事者間における製品取引、役務提供もしくは技術供与、実施許諾、または共同開発の提携等について約束するものではなく、いかなる意味においても、相手方に対して現在または将来に関するいかなる法的利益又は事実上の期待利益をも付与するものではないことを、相互に確認するものとする。


<趣旨>

・この契約に基づいて秘密情報が開示されたからと言って、当事者間に何らかの取引自体が成立したものと解釈されたり看做されたりしないことを、確認的に規定。
国際契約ではあった方がよい。


第11条(第三者との契約)

甲および乙は、本契約を締結したことによって、それぞれが第三者との間で本検討と同種の検討、開発、取引、提携その他の業務を行うことを妨げられものではないことを、相互に確認するものとする。
但し、甲および乙は、当該第三者との業務の遂行において、本契約に基づく機密保持の義務に違反することはできないものとする。



<趣旨>

・この契約に基づいて秘密情報が開示されたからと言って、他の会社との協業等の検討を妨げるものではないことを規定。
・なお、本契約が単なる秘密保持の契約ではなくて、予備的合意のようなものである場合は、前条及び本条のような規定は置かれない。


第12条(損害賠償)

 甲または乙が本契約に違反して機密情報を漏洩した結果相手方に損害を与えた場合、違反により相手方に損害を与えた当事者は、当該機密漏洩と相当因果関係の範囲内にある相手方に直接発生した損害を賠償する責任を負う。




<趣旨>

・秘密情報が漏えいした場合の賠償義務を規定。
・規定しなくても漏えいによって相手方に損害が発生した場合は、民法に基づき損害賠償義務を負う(民法415条)。
・民法の損害賠償範囲は、通常損害、及び予見可能性のある特別損害であるが、本条は、「直接発生した損害」としている。

<問題点>

・本条の規定は、概ね民法の規定といっしょであるが、「直接発生した損害」のとらえ方によっては、民法の定める賠償範囲とずれる場合がある。
・「直接損害」は、日本の法律上明確な定義はない(英米法上:コモンロー上の間接損害に対する言葉)。従って、相当因果関係にあって間接的に発生したのではない損害であれば、予見可能性がなくても特別損害をも含むとも考えられるし、逆に予見可能性があっても特別損害は含まない趣旨であるとも考えうる。
・従って、もし賠償範囲を限定しようとする場合、直接損害なる言葉ではなく、あるいはそれに付加して、「予見可能性の有無を問わず特別な事情から発生した損害を含まない」と規定すべきであろう。


第13条(有効期間)

本契約は締結日より発効し、機密情報のすべてが第2条但し書き第1号から第4号のいずれかに該当するまで、存続するものとする。

<趣旨>

・本契約の期間は、一般の契約のように「何年」としてもあまり意味がない。そのような契約期間が終了したとしても、各当事者は秘密保持義務を負い続けるのであり、その限度で、本契約のあらゆる規定は存続する必要があるからである。従って、本条のようにあらゆる秘密情報が例外に該当してしまうまで、契約を有効とする意味がある。
・なお、秘密保持期間を開示から3年などとする場合は、当該期間満了をもって契約の終了となる。

<問題点>

・秘密保持期間は、永遠無限で構わないか。製造ノウハウや顧客情報などは、永遠無限の秘密保持義務が課せられることが多いが、ソフトウェア等の技術的な情報、市場情報などについては、割合早く陳腐化するであろうから、3年あるいは5年という期間を切る場合も多い。秘密の性質に応じた必要な範囲の義務期間とすべきである。


第14条(合意管轄)

甲および乙は、本契約に関する紛争は、東京地方裁判所をもって、第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。


<趣旨>

・裁判管轄を、合意で定める規定である。講学上、「訴訟契約」と呼ばれるもので、有効とされている。
但し、管轄の合意は、第1審に限り、かつ書面でなされる場合に限って有効となる(民訴法11条)。
・ここで、「専属的」合意管轄と定めているが、「専属的」と記載されていない場合は、「付加的」なものとされるため、「東京地裁以外の管轄に加えて東京地裁にも訴えることができる」という意味になることに注意が必要である。


第15条(協議事項)

本契約に定めのない事項あるいは本契約の履行につき疑義を生じた場合は、甲乙相互に誠意をもって協議し、円満に解決を図るものとする。



以上、本契約の証として本書2通を作成し、甲乙記名捺印の上、各1通を保有する。




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代表 寺村 淳
 東京大学法学部1985年卒
 日本製鉄法務等企業17年
早稲田大学オープンカレッジ講師
 行政書士/宅建主任有資格
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著書

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