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ライセンス契約の特徴と作成のポイント2−寺村総合法務事務所

ソフトウェアライセンス契約の説明2COMPANY

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3.ソフトウェア・ライセンス契約(サブライセンス権付き)の構成とポイント−2

  • 独占性条項

    前記項目でも独占的か非独占的かを明記する旨を記載しました。

    ここでは、独占性がある契約について、その具体的な中身を規定します。
    例えば、ライセンサーが、ライセンシーに認めた独占的地域(以下「本地域」とします)のお客さんから引き合いを受けた場合には、ライセンシーに必ず取り次ぐ、という定めです。
    あるいは、ライセンシーが「本地域」以外では商売をしないことを明記し、独占性の限定を行います。


  • 当事者の関係条項

    当事者の一方が他方の「代理人」ではなく、また両当事者がパートナーシップ(組合関係)などを形成するものではないことを宣言する規定で、一方が他方に成代わって義務を負担するような行為をしてはならない旨を定めます。

    ライセンシーが、ライセンサーの代理人となる場合は、販売代理店契約のうちの「代理店契約(代理人による販売委託契約)」的なものとなってしまいます。

    ここでは、独立して行為する独立した当事者であることを明記し、ライセンシーが勝手にライセンサーの債務を負担してしまうようなことを禁止する旨を明らかにします。


  • 情報開示条項

    ソフトウェア・ライセンス契約において、対象となるソフトウェアを開発したのはライセンサーですから、許諾を受けるライセンシーが複製したりあるいは改変やローカライズしたりするために必要となる情報を、ライセンシーに提供することが必要となる場合もあります。

    具体的には、プログラムコードのほかに、マニュアルや仕様書、データベース、知的財産権に関する事項などが考えられます。


  • 技術指導条項

    前記「情報開示条項」の発展形として、ライセンサーからの技術移転を確実にするため、ライセンサーの技術者がライセンシーに対して行う、本ソフトウェアの複製や修正、ローカライズ、翻訳、あるいは顧客にライセンスした後の保守サポート等の実施に必要な技術的指導や訓練に関する規定です。

    ライセンス契約上に事細かにそのトレーニングの内容を規定することは難しいので、別途協議ということになることが多いと思います。
    でも、最低限、費用負担者の定め、あるいは費用負担者の決め方に関する定めを規定しておくべきでしょう。

    また、費用に関連しますが、ライセンサーの技術者がライセンシーの元へ出張するのか、それともライセンシーの技術者がライセンサーの元へ行くのかによって、費用額は大きく異なってきます。そのあたりまでは、合意して契約に規定しておいた方が良いでしょう。


  • ロイヤルティ条項

    「ロイヤルティ」すなわち「実施許諾の対価」の定めです。
    最初に述べた通り、この点が販売代理店契約との大きな違いということになります。

    ロイヤルティには、通常、大きく分けて3通りのものがあります。

    一つは、「ランニング・ロイヤルティ」というもので、ライセンシーが複製し再使用許諾(販売)した本数1本につき幾ら、という計算のもと支払われるものです。

    二つ目は、「イニシャル・ペイメント」「ダウン・ペイメント(頭金)」などと呼ばれるもので、ライセンサーのこれまでの開発対価の一部補てんなどを目的として、契約当初にある程度の大きさをもった金額が支払われる場合です。

    ただし、イニシャル・ペイメントの場合、それが全くランニング・ロイヤルティと別の実施許諾の対価であって、ランニング・ロイヤルティが別途必要な場合が普通ですが、イニシャル・ペイメントが「前払い実施料の性格、つまり「ランニング・ロイヤルティの前払い」という性格を持っている場合もありますので、よく条項を見定めることが必要です。

    三つ目は、「一括払いロイヤルティ」などと呼ばれるもので、ランニング・ロイヤルティなしに、契約当初に実施許諾料全額を支払ってしまうというものです。

    ライセンサーが、それまでの開発費を出来るだけ早く回収することを希望する場合には、多額のイニシャル・ペイメントを要求してくる場合があります。そのような場合、ライセンシーとしては、最初にその額は払うことにするものの、その代りとしてランニング・ロイヤルティに充当できる「前払い実施料」として支払う、といった交渉も考えられるところです。


    ランニング・ロイヤルティの算定については、後から揉める可能性がありますので、明確に書くことが必要です。
    通常、ライセンシーが上げた利益額の一定パーセントとすることが多いのですが、その場合は、売上と認められる範囲、コストとして差し引ける範囲を細かく規定して疑義が生じないようにしておくことが肝要です。
    ライセンシーがその再代理店などに対し、いわゆる「キックバック」をした場合、それをコストとして認めるかどうか、なども争点となり得ます。

    ライセンシーのコストを厳密に計算するのは大変だという場合、例えばライセンシーの小売価格(売上)の一定割合をロイヤルティとしてしまうこともあります。
    この場合、売上に占める利益の額に拘わらず、売上に対して一定割合のロイヤルティの支払いが生じますので、利益率の見積りという大きなリスクを背負うことになります。
    簡便ではありますが、そのようなリスクを認識しておくことが必要です。

    なお、当然のことではありますが、ライセンサーがライセンシーの小売価格を決定したり支配したりすることは独禁法違反の恐れが大ですので、注意すべきです。


  • ミニマム・ロイヤルティ条項

    上記のランニング・ロイヤルティに関連し、その最低額を定める場合があります。

    それがこのミニマム・ロイヤルティの定めで、ライセンシーの利益額(または売上額、売上本数など)がいくらであったとしても、このミニマム・ロイヤルティ額以上の支払いを、ライセンシーが保証しなければならない、というものです。
    (販売代理店契約における最低購入量の定めと同様の性格です。)

    ミニマム・ロイヤルティが短期のロイヤルティ期間において巨額となると、ライセンシーに大きな負担となりますし、未達成の場合に契約解除の要件とされることもありますので、詳細な検討が必要な項目です。


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代表 寺村 淳
 東京大学法学部1985年卒
 日本製鉄法務等企業17年
早稲田大学オープンカレッジ講師
 行政書士/宅建主任有資格
Email:legal(at)eibun-keiyaku.net
 (at)を@にして下さい
TEL042-529-3660


著書

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